「水」が滞ると、からだに何が起こる?
~むくみだけではない、漢方の「水」のお話~
私たちのからだの多くは「水分」でできています。
血液、リンパ液、胃液、唾液、汗、涙など、
水分はからだの中を適切に巡りながら、私たちの生命活動を支えています。
ところが漢方では、この水分が必要なところに行かず、ある場所に停滞したり、偏って存在したりする状態を重視します。
これを「水滞(すいたい)」などと考えます。
「水滞」=むくみ、だけではありません
「水が滞る」と聞くと、
足がむくむ、顔が腫れぼったい、水太りする
といった症状を想像するかもしれません。
もちろん、それも代表的な症状です。
しかし漢方で考える「水」の異常は、もっと幅広いものです。
たとえば、
- めまい・耳鳴り・頭痛
- 動悸
- からだの痛み
- 痙攣
- 咳・喘鳴
- 吐き気・嘔吐
- 下痢や排便の異常
- 胃の中で水がポチャポチャする感じ
- 口が渇く
- 汗・涙・唾液などの分泌異常
- むくみ・水太り
なども、「水」の偏りという視点から考えることがあります。
つまり大切なのは、
「水が多いか、少ないか」だけではなく
「水が、どこに、どのように存在しているか」
なのです。
漢方では「気」が水を動かす
ここが少し専門的なお話です。
漢方では、からだを支える重要な要素として、
「気・血・水」
という考え方があります。
「血」と「水」は物質として存在しますが、
「気」は目には見えない、からだを働かせる力・エネルギーのようなものとして考えます。
そして、
気によって、血も水も動かされている
と捉えます。
そのため「気」の巡りが悪くなると、
水の巡りも悪くなり、ある場所に水が停滞することがあります。
反対に考えれば、
水の症状だからといって、水だけを見ればよいわけではない
ということです。
漢方相談では、
「なぜ、そこに水が滞っているのか?」
まで考えていきます。
水が滞る「場所」によって症状が変わる
水の異常は、どこに現れるかによって症状が違います。
頭のほうに影響すれば
めまい、耳鳴り、頭痛など。
胸のほうに影響すれば
動悸、咳、喘鳴など。
胃腸に影響すれば
吐き気、下痢、胃内停水など。
皮膚や手足に現れれば
むくみ、水太りなど。
このように、一見するとバラバラに見える症状を、
「もしかすると、同じ“水の偏り”から起きているのでは?」
と一つにつなげて考えるところが、漢方のおもしろいところです。
水を動かす漢方薬
漢方では、水の異常に対して使われる生薬として、
茯苓(ぶくりょう)・朮(じゅつ)・猪苓(ちょれい)・沢瀉(たくしゃ)・木通(もくつう)
などがあります。
さらに、症状や体質によって、
麻黄・半夏・生姜・杏仁・黄耆・細辛・呉茱萸・防已・乾姜
なども用いられます。
代表的な漢方処方には、
五苓散、猪苓湯、沢瀉湯、小青龍湯、苓桂朮甘湯
などがあります。
ただし、これらは単純な「利尿剤」と同じ考え方ではありません。
漢方では、
「水を無理に出す」のではなく、
「その人の水の偏りを見ながら整えていく」
という視点が大切になります。
そのため、同じ「むくみ」でも、同じ漢方薬になるとは限りません。
「怪病は痰として治せよ」
伝統漢方には、
「怪病は痰として治せよ」
という言葉があります。
なかなか原因が分からない症状や、
いくつもの不思議な症状が重なっているとき、
「水」の異常という視点から、もう一度からだ全体を見てみる。
そこから治療の糸口が見えてくることがあります。
症状ではなく「からだ全体」を見る
めまいだから「頭」だけ。
むくみだから「腎臓」だけ。
咳だから「肺」だけ。
漢方では、必ずしもそのようには考えません。
気は巡っているか。
血は滞っていないか。
水は必要なところに届いているか。
一つひとつの症状を別々に見るのではなく、
「からだの中で、何が起こっているのだろう?」
と全体を見ていきます。
それが漢方の「気・血・水」という考え方です。
からだは、バラバラの部品ではありません。
一つにつながり、互いに影響し合っています。
「水」の偏りを知ることは、
自分のからだの声を知る一つのヒントになるのです。


